不貞行為が発覚した場合、不貞相手の夫または妻から突然連絡が来て、呼び出しを受けたり、また、弁護士から慰謝料請求の内容証明郵便が届くようなことがあります。
このような場合、請求された当事者は、相手方と話し合いを行わなければならなかったり、弁護士と交渉を行わなければならなくなり、精神的な負担が極めて大きいといえます。
また、会社にいわれるのではないか、親族にばらされるのではないか等、不貞行為以外の事柄についても不安を抱えることになります。
不貞問題が発覚し、どうすればよいのかお悩みの方はまずは当事務所長崎オフィスまでご連絡ください。
現在おかれているご相談者様の状況を一緒に整理し、証拠の有無、対応の仕方等アドバイスを行い、弁護士を介在するほうが適切な場合には、ご相談者様に代わり、当事務所の弁護士が相手方と交渉や訴訟の対応を行い、ご相談者様の精神的な負担を軽減いたします。
  

1 慰謝料請求が認められない場合

不貞慰謝料を支払えという内容証明郵便が届いたり、そのような内容が記載された訴状が届いた場合、以下のような主張を行い、慰謝料の請求を阻止したり、慰謝料の支払い金額を減額したりします。

(1) 婚姻関係の破綻

不貞行為があったとしても、その時点においてすでに婚姻関係が破綻していたような場合には、慰謝料請求は認められないとされています。
この場合、夫婦間の婚姻生活の平和を破壊したとはいえないからです。
婚姻関係が破綻しているかどうかの判断要素として、典型的な事情は長期間の別居です。もっとも、裁判例では、別居という事実のみで婚姻関係の破綻を認めているわけではなく、その別居に合理的な理由があれば婚姻関係が破綻したとはいえないとしています 。

婚姻関係破綻の有無については、

  1. 婚姻の期間
  2. 夫婦に不和が生じた期間
  3. 夫婦双方の婚姻関係を継続する意思の有無やその強さ
  4. 夫婦関係修復への努力の有無やその期間等

を総合的に考慮して判断されます。

なお、裁判所は、婚姻関係が破綻していたとまでは言えないが、円満を欠いていた、危機的状況であった、破綻寸前であったなどと認定することがあります。これは、婚姻関係が破綻していたとすると、慰謝料が認められなくなるため、一応慰謝料請求権があることを認めて、容認額を低額にするなどして事案に応じた対応をしているといえます。

ア 破綻を否定した事例

婚姻関係が破綻したといえる場合の一例としては、夫婦間の肉体関係が一切なく、日常生活の接触もほとんどなく、寝室や食事も別という状態になってから相当の期間が経過しているような場合が挙げられます。
他方、単に家庭内別居しているというだけで破綻が認められるものではありません。

婚姻関係が円満を欠いていたが破綻はしていないと認定したもの
  1. 夫婦が寝室を別にして肉体関係を持たなくなったという事例
  2. 数回にわたって離婚を口にするほど喧嘩が絶えなかったという事例
  3. 婚姻当初から共同生活における夫と妻の役割分担や家計について意見が相違しており両者が不満を持っていたという事例
婚姻関係が破綻寸前であるが未だ破綻はしていないと認定したもの
  1. 不貞配偶者が何度も離婚するように求めており不貞相手との同棲を開始していた事例

イ 破綻を肯定した事例

婚姻関係の破綻が認められたもの
  1. 夫婦間の信頼関係を回復することができずに別居に至っており夫婦間で離婚協議がなされているような事例
  2. 1年以上も別居状態になっており婚姻関係の修復が困難であった事例
  3. 既に離婚調停の申立てがあった事例

(2) 消滅時効

不貞行為による慰謝料請求は、不法行為に基づく損害賠償請求であるため、3年間の消滅時効にかかります(民法724条1号)。消滅時効にかかると、不貞をされた配偶者は、不貞を行った配偶者及びその不貞相手に対する慰謝料請求はできなくなります。
消滅時効の起算点は、被害者(不貞をされた配偶者)が損害および加害者を知ったときになります。被害者が損害を知ったときは、夫婦が離婚する場合には離婚成立時、離婚しない場合は不貞行為を知ったときになります。

(3) 期待可能性の欠如

不貞行為が、相手方の意思を制圧して行われた場合(脅迫による性行為など)、相手方には適法行為に出る期待可能性がなかったとして、相手方の不法行為責任が否定されることがあります。
なお、このような場合は、慰謝料の減額事由となることもあります。

(4) 枕営業・性風俗店

性風俗店を利用し、それが奥様にバレしまう方が多数います。
裁判例では、配偶者が、枕営業や性風俗店で性行為を行ったような場合、そのような性的サービスを行った者は、不法行為責任を負わないとしたものがあります。理由は、業務として性的サービスを行ったにすぎず、それ自体が直ちに婚姻生活の平和を害するものではないからとしています。

2 不貞関係における犯罪行為

(1) 犯罪が成立する場合

ア 名誉毀損

不貞を行った内容を会社やブログ等に公表された場合は、名誉毀損罪(刑法230条1項)にあたることがあります。
具体的には、夫や不貞相手の職場に電話をかけて、この人不倫していますなどと言う行為、近所の人に夫は不倫していると言いふらす行為が、名誉毀損にあたることがあります。

イ 恐喝

不貞相手に、慰謝料100万円支払わないと職場にばらすぞなどと言って、金銭の支払を要求した場合は、恐喝罪(又は未遂罪)が成立することがあります。

ウ 脅迫

不貞相手に、不倫をばらすぞ、不倫をやめないと殺すぞなどと言う行為は、脅迫罪が成立することがあります。

エ 強要

不貞相手に、公衆の面前で土下座しろなどと言って、無理矢理相手に法的義務のない行為を強要した場合は、強要罪(223条1項)が成立することがあります。

 (2) 法的手段

上記のように、犯罪が成立する場合は、犯罪行為を行った相手を告訴することが考えられます。また、不法行為として損害賠償請求をすることも考えられます。
もっとも、実務上、改めて損害賠償請求をすることはほとんどなく、上記のような悪質な行為があったとして慰謝料の減額を主張するにとどまります。

3 不貞慰謝料の求償権

(1) 求償権の意味

求償権とは、他人の負債を肩代わりした人が、肩代わりした分を本来の債務者に請求する権利のことです。
不貞行為の場合、不貞慰謝料を支払う義務を負うのは、不貞を行った配偶者とその不貞相手です。例えば、不貞相手が被害者(不貞をされた側)に対して慰謝料を200万円支払った場合、不貞相手は不貞を行った配偶者に対して、慰謝料の一部を負担するよう請求できることがあります。
これが不貞行為における求償権です。負担割合は原則として平等になりますが、一方が積極的に不貞行為を行った場合には一方の負担割合が多くなるこがあります。
求償権を行使できるのは、慰謝料を支払った後で、支払う前に求償権を行使することはできません。

(2) 消滅時効

 
求償権の消滅時効は、5年間です。慰謝料請求権の消滅時効は3年間ですが、求償権は一般の債権として扱われて民法166条1項1号が適用されます。
起算点は「権利を行使できることを知った時」(主観的起算点)です。「権利を行使することができることを知った時」とは、債権者が債務者や権利の発生、履行期の到来などを認識したときをいいます。不貞慰謝料の求償権の場合は、慰謝料を支払ったときに求償権が行使できるようになるため、慰謝料を支払ったときが時効の起算点になります。
なお、慰謝料を支払ったときから10年間求償権を行使しない時にも、求償権は消滅時効にかかります(客観的起算点。)。